prologue1‐2【スピリチュアル系女子の気配は霧の様】
サークルメンバーと言っていいのかはわからないが、僕以外にもここに来る人がいる。
「遅いわ……待ちくたびれたの。でも、いいわ。今日も観察させてもらうから……」
噂をすれば影、唐突に声を掛けられて僕の蚤の心臓が跳ね上がる。
気を抜いていたら今頃、乙女の様な声をあげていただろう。
しかし、もう慣れたので声を出すことはない。
彼女が唯一僕以外に出入りしている存在。
気付いたらそこにいる神出鬼没のハーフ女子、
静かに僕の研究を観察だけしている謎多き少女。
僕の一つ上で四年の先輩。
エリゼル・ミストーリア・ジャンファルク
僕より年上だが明らかに小さい、
それこそ公共施設では確実に声を掛けられるレベルに。
総体的に白っぽい印象で見方によっては怪しくも見える。
まぁ、僕としては邪魔さえしなければそれは構わないので好きにさせている状態だ。
いつも静かだしそれだけで十分だ。
この場所は、あらゆる情報を駆使して手に入れた活動拠点。
ほとんど僕の私物と父の遺品がを持ち込んだだけなんだけど。
ここは元から物置になっていてそれらの管理、状態維持を条件にここを借りている。
今のところ成果は無い。
だが、様々な考察文や論文紛いのモノを提出しているので立ち退きの心配はない。
……と思う。
教師諸君は大凡読んではいないだろうけどねぇ……
代り映えしない毎日、周りの奴らはラノベや漫画を読んで、
「転生してぇ」とか「特殊な能力が欲しい」とか退屈な毎日に非日常をという刺激を
欲しているが、僕はそうは思わない。
なぜなら、どんな些細な出来事でも
非日常を知ってしまえば願っても戻れなくなるから。
非日常は知らない世界だから非日常なのだ、知ってしまえばそれは日常になる。
どこかで線を引いているからこそ楽しく考察できるし、様々な事例を知れるのだ。
ふと、凝り固まった肩を解し、周りを見る。
「今日も今日とて、研究をしていたら遅くなってしまったな」
日も落ちて暗くなっている、いつの間にか先輩の姿もなくなっている。
僕は結構のめりこむと周りが見えなくなるタイプだが、それを抜きにしても物音一つ
立てずにその存在が消えるかの様に現れたり消えたりする先輩は最早、
シノビの者なのではないだろうか。
等と毎度似たようなことを考えながら片付けと帰宅準備をする。
「そろそろ帰るか」
忘れ物と戸締り確認をして僕は部室を出た。