prologue1‐1【非化学はオカルトではないよ】
「昨夜、未明。波森重工株式会社の代表取締役社長である、
波森 善哉氏(67歳)男性が遺体となった状態で発見されました」
「波森氏は以前から消息不明で捜索中でしたが、
今回も前回に引き続き特定の部位を損傷していたとのことでした。
そのため、今回の事件も同一犯の可能性があるとされています。」
「前回も含め、今回で5人目の被害者ですね。」
「警察の調査では未だ犯人の目星はついていないとのことです。
恐ろしいですね、早く見つかるといいですね。
では、続いてのニュースです。」
テレビで流れるニュース番組を聞き流し、彼女はふと意識を手元から離す。
テレビで流れるニュースキャスターと司会が「物騒ですね、夜道は気を付けましょう」
等と呑気に会話している。彼女は切れ長の目をスッと細めて呆れた風に呟いた。
「ふざけてるわ……」
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実卸大学三年 飛雫 梓 彼女はいつも落ち着いた雰囲気の育ちのよさそうな女性だ。
女子、と括るには実に大人びているが離せば気さくに明るく対応してくれる。
それが例え処世術の一つであっても。
勘違いなど烏滸がましい、僕は所詮モブだ。
彼女の世界では僕はその他大勢でしかない、今日もその姿を見るだけで満足だ。
僕の名前は 神門司 要 彼女と同じ実卸大に通う同学年の学生だ。
成績は中の下、運動は苦手じゃないけど好きでもない
趣味は理解してもらえないだろうけど、非化学研究。
答えの無いガセネタからまだ見ぬ真実を見つけ出すのがたまらなく好きだ。
嘗て、父が何処かの研究員をしていたせいか、
書斎にはそういった非化学の書物や骨董品がゴロゴロあった。
そのせいかもしれない。
そんな趣味にのめりこみすぎて、一年の頃に何人かで非化学研究愛好会を立ち上げたが、他の奴らは頭数合わせなので初日以来一度も来ていない。
まぁ、彼らはオカルトに興味があっただけで
非科学に興味はなかったみたいだからね。
仕方ないよ。